「娼婦たちから見た日本」八木澤高明氏
日本だけでなく、東南アジアや南米を訪れ、娼婦たちの取材を続けた。
「日本人の夫が青森県住宅公社から約12億円横領して話題になったチリ人の元娼婦・アニータにも取材しました。悪女と呼ばれていますが、家族のために売春をいとわず日本に来たじゃぱゆきさんの数少ない成功者です。泥沼の貧困から抜け出したたくましさ、家族との絆の深さや優しさは昔の日本人の姿、心の原風景のようなものと重なるのでしょう。貢ぐ男はそこに引かれるのかもしれません」
もちろん取材のために自ら買うこともある。
「買わないと見えないこともあるし、外国人娼婦と長く付き合って一緒に住んだこともあります。宗教心からくる売春に対する罪悪感とか、生活を共にして初めて見えたこともありました。日本人娼婦にはこういう罪悪感があまりなく、もっとビジネス感覚。ある意味、自分自身を見たような気がします。多くの日本人同様、僕自身も宗教心はほとんどないですから。いずれにしても、どんなに摘発しようと結局は売春はなくならないし、娼婦もいなくならない。何も変わらないんですよね」