「娼婦たちから見た日本」八木澤高明氏
神奈川県横浜黄金町、三重県渡鹿野島、沖縄県真栄原。かつては「ちょんの間」と呼ばれる売春施設が立ち並び、周囲の飲食店や商店は栄え、活気づく色街だったが、今は見る影もない、廃虚と化した街もある。
「色街の浄化運動って、行政からするとわかりやすい点数稼ぎなんですよ。そもそもの発端は新宿・歌舞伎町の浄化作戦。あれが浄化ブームのような形で全国に飛び火し、横浜も沖縄も潰れました。お上の意思だけで、街が消されるのはどうかと思うんですよね。色街はひとつの文化ですし、浄化という言葉には傲慢さと違和感を覚えるんです」
2001年から黄金町の取材を始め、全国の色街や元・色街を回った。
「もともとは街に立つ娼婦を見て、なぜここに流れ着いたのか興味がありました。古くは明治時代に国策として日本から海外へ渡った“からゆきさん”、バブル期に東南アジアから日本に来た“じゃぱゆきさん”など、娼婦の歴史は世界の経済情勢や社会構造ともリンクしますから。年齢も国籍も多様な娼婦の背景を知ることで、今の日本や日本人の本当の姿が見えるかなと。色街も娼婦も人と金の集まる場所に流れ着くのが常ですからね」