「熱狂なきファシズム」想田和弘著

公開日: 更新日:

 ファシズムが「ハイル、ヒトラー!」を叫ぶ群衆場面のような熱狂を伴っていたのは昔の話。現代ニッポンでは「熱」を感じさせないトホホな全体主義が社会を覆い尽くしている。

 その象徴が安倍首相。その政治手法は「あっさり」と「突然」が特徴。たとえば改憲問題では一時期意欲を見せた「96条」の先行改定策の旗色が悪いと見るや、「あっさり」解釈改憲に路線転換した。また特定秘密保護法問題では、昨年秋の臨時国会での所信表明演説では一切触れなかったのに、「突然」法案を国会に提出し、強行採決に踏み切った。そこに熱狂や興奮がないのは、実は国民に正面から問題の核心を問うことを避けているからだ。

 その正反対が橋下大阪市長。挑発と攻撃で激しい賛否を巻き起こしながら熱狂的ブームを呼んだものの、結局は「ストレートで、或る意味バカ正直な彼の手法」は世間から見放され、橋下ブームは去ってしまった。新進気鋭のドキュメンタリー映画監督である著者は、こうした状況を観察し、「ずるずるじわじわコソコソと進むファシズム」が現代の特徴なのだと喝破している。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由