戦争が終わっても“壊れ続ける”兵士たちの苦悩

公開日: 更新日:

 集団的自衛権の行使容認などを踏まえた安全保障法制をめぐり、着々と進む与党協議。日本は今、再び“戦争ができる国”への道を進もうとしている。

 しかし、戦争の代償はあまりにも大きく、戦いが終わっても容易に傷が癒えるものではない。そんな現実を突きつけるのが、デイヴィッド・フィンケル著、古屋美登里訳「帰還兵はなぜ自殺するのか」(亜紀書房 2300円+税)。戦争がきっかけで重い精神的ストレスを負ったアメリカ人兵士5人の苦悩の日々を追跡し、帰国後の彼らの“壊れ方”を生々しくリポートしている。

 イラク戦争で戦ったアダム・シューマン(28歳)は有能で、親切で、高潔。誰からも信頼される男だった。しかしアメリカに帰国後、毎日のように自殺願望に苦しめられ、重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される。その引き金となったのは、戦地でのある出来事。可愛がっていた部下が、アダムが不参加の任務で道端の爆弾にやられて命を落とす。同僚の兵士は、「あんたがいたら、こんなひでえことにはならなかったのにな」と声をかけた。それはアダムを称える意味の言葉だったが、彼にとってそれは“おまえのせいで死んだ”という意味に置き換えられ、とてつもない罪悪感となって心を壊していった。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」