春、かそけきものの声を聞く
この製本は俗に「コデックス装」と呼ばれる。通常、ノド側(見開いたときの綴じてある部分)は見づらいものだが、この装本は開きがよい。大きな写真も気兼ねなく、見開きページを「またぐ」ことができる。机の上で力なく「パタリ」と開かれ「はらりはらり」とめくられるページの様子は、賢治ワールドではおなじみ、はかなき「雲母」「幻灯」の翻案とも思えるのだが、さて……。
春風駘蕩。暖かい風に誘われるがまま、本書を持ってどこかにブラリと出かけてみよう。(ナナロク社 1600円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。