「仁義なき宅配」横田増生氏
「羽田で働く、あるキャリア社員の給与明細を見せてもらいましたが、額面で24万円。扶養手当、地域手当はない。年2回、ボーナスが1500円とか3000円とか。桁を聞き間違えたかと思って聞き直しました」
こんな待遇を強いて、日本は宅配の誤配率0・01%前後という世界でも驚異的な数字を達成している。それを「素晴らしい」というのは企業の理屈で、働かされる方はたまったもんじゃない。
「消費者は配送料無料で、しかも正確な時間の配達を求める。しかし、消費者と労働者は同一人物なんですよ。自分で自分の首を絞めている。今後、どれだけコンピューターが発達しても、物流業務に人手がかかることは変えようがない。宅配業者がサービス過剰合戦をやめない限り、今に担い手がいなくなる。外国人だって、そっぽを向く。そのとき誰が宅配を担うのか。矛盾に満ちた格差社会の縮図がここにありました」
不在伝票を見て、もう一度荷物を運ばせることに慣れてはいけない。(小学館 1400円+税)
▽よこた・ますお 1965年、福岡県生まれ。物流業界紙の記者、編集長を経て99年からフリー。著書に「評伝ナンシー関」「ユニクロ帝国の光と影」など。