「猫ノ眼時計」津原泰水著
豆腐好きという共通項で結ばれる猿渡と怪奇小説家の「伯爵」は、名物の「豆腐竹輪」を求めて鳥取を訪ね、猿渡は宿泊したホテルでアイダベルと再会する。かつて猿渡は売れない歌手だったアイダベルのバックバンドの一員としてツアーに参加したことがあったのだ。ホテルは彼女の実家だった。伯爵のファンだというアイダベルはサインを求めるが、伯爵は急用を思い出し慌てて帰京。猿渡は伯爵を追って今にも東京に向かいそうなアイダベルが文楽の「清姫」に重なって見える。その夜、ホテルの庭のあずまやが突然燃え始め、猿渡はその場からアイダベルが立ち去るのを目撃する。(「日高川」)
幻想怪奇譚とミステリー、ユーモアが融合した人気シリーズ完結編。
(筑摩書房 800円+税)