「おとめの流儀。」小嶋陽太郎著
スポーツ小説は数多いが、なぎなた小説は珍しい。なぎなたの試合のルールについては、たとえば中学生のなぎなたの長さが、2メートル10~25と決められていて、試合は2分間であるなど、さりげなく織り込みながら物語が進んでいくので、何も知らなくても大丈夫だ。
なぜここで中学生のなぎなたの長さが出てくるかといえば、本書が中学生小説だからである。廃部の危機に直面していたなぎなた部に入部した中学1年のさと子を主人公にした長編なのである。まず、寄せ集めた6人の部員のキャラが立っているのがいいし、公園のベンチにいつも座っている競馬おじさんや、朝子先輩に食って掛かる剣道部のキツネなどの脇役までもが活写されているのもいい。
なによりもいいのは、このなぎなた部の目標だ。通常のスポーツ小説では、県大会や全国大会などで勝つことを目指していく。クライマックスはそういう試合であることが多い。しかし本書は、そういう大会を目標にしていない。彼らの目標はなんと剣道部を倒すこと。なぎなたと剣道の対決であるから、練習試合にすぎないのに、それが彼らの最大の目標なのだ。この異色の構造がいい。青春小説の佳作として読まれたい。