「エミリの小さな包丁」森沢明夫著

公開日: 更新日:

 主人公は、信頼していた人に裏切られ、仕事もお金も居場所も失った25歳のエミリ。両親はエミリが10歳のときに離婚、父親にはすでに別の家庭があり、母親には恋人がいて帰れる家庭はない。

 さらに仲のいい兄は渡米中で頼るわけにもいかない。仕方なく、東京を離れて15年間会っていない祖父の家に転がり込んだ。そこは東京とは全く違う小さな漁師町。ずっと昔に妻を亡くして以来、そんな田舎町にひとりで住んでいた祖父は、何も聞かずエミリを淡々と受け入れる。食卓に並ぶのは、地元の魚や野菜で作ってくれた祖父の料理。一口食べたエミリは、そのおいしさに心を動かされ始めるのだが……。

 高倉健主演映画「あなたへ」の小説版や、吉永小百合主演映画「ふしぎな岬の物語」の小説版でヒットを飛ばし、今年は「夏美のホタル」が映画化された著者による最新作。さまざまな事情を抱えて傷ついた人間が、自分自身を取り戻していく物語を優しくつづっている。

(KADOKAWA 1600円+税)





【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  2. 2

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  3. 3

    カブス鈴木誠也が電撃移籍秒読みか…《条件付きで了承するのでは》と関係者

  4. 4

    優勝の祝儀で5000万円も タニマチに頼る“ごっつぁん体質”

  5. 5

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

  1. 6

    広末涼子“密着番組”を放送したフジテレビの間の悪さ…《怖いものなし》の制作姿勢に厳しい声 

  2. 7

    石橋貴明のセクハラ疑惑は「夕やけニャンニャン」時代からの筋金入り!中居正広氏との「フジ類似事案」

  3. 8

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  4. 9

    広末涼子とNHK朝ドラの奇妙な符合…高知がテーマ「あんぱん」「らんまん」放送中に騒動勃発の間の悪さ

  5. 10

    元フジ中野美奈子アナがテレビ出演で話題…"中居熱愛"イメージ払拭と政界進出の可能性