政治・経済から「風俗業界」をばっさり分析

公開日: 更新日:

「図解 日本の性風俗」中村淳彦著(メディアックス 1500円+税)

「売春するきっかけは政治経済が影響」

「(一般女性が続々と裸になっているのも)政府が新自由主義政策を選択したから」

「女性たちを苦しめることになったのは労働者派遣法改正」

 著者の独自の論評は、風俗業界をばっさりと政治・経済で分析する点にある。著者は二十数年前、大学生のときに私の知り合いの事務所で駆け出しライターをはじめた若者であり、いまノンフィクション系ライターのなかで最も売れている書き手になった。

 本来なら売れているAV女優、人気風俗嬢をインタビューするものだが、著者は端役扱いの企画系AV女優、売れない風俗嬢を対象にする。風俗・AV取材の際に妙に物分かりのいい、同志的な立場で書く書き手が多いなかにあって、彼は彼女たちに変な同情はせず、むしろ突き放す。本書は2016年のリアルな風俗業界を暴露している。

 二昔前なら、風俗嬢という職業はカネになるものだったが、不況でなり手が増えデフレ化した風俗業界は決して割のいい職業ではなくなった。

 40代で10年間ピンサロ勤めをした後、離婚して3人の子どもを置いて上京、ベッドメーキングの仕事をしたが解雇され、熟女AVに出演するも仕事がなくなり自殺未遂、警察に保護され、初めて生活保護という制度があるのを知り、生きながらえた66歳女性の話が載っている。

 女性の味方を自任する女性人権派(フェミニスト)が、風俗嬢を性奴隷的な見方しかできず、風俗嬢の労働条件を改善するのではなく、風俗業界の規制強化を訴え、結果として風俗嬢たちの職場を奪っている矛盾を中村は指摘する。

 たしかに風俗嬢と女性人権派は共闘を組めるはずなのに、風俗嬢たちは安倍支持を唱える保守系の半グレたちにもっていかれているのが現状だ。

 情を極力排除し経済学で風俗業界を論じる中村淳彦は、夜のトマ・ピケティか、風俗業界の森永卓郎か!?

【連載】裏街・色街「アウトロー読本」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議