「帰郷」浅田次郎著

公開日: 更新日:

 戦争が終わって3カ月、新宿駅近くの闇市の片隅に立つ街娼の綾子は、体を売って日々をしのぐ自分が野良猫以下の生き物に思えて仕方ない。目の前の駅から汽車に乗れば、故郷に帰るのはたやすいが、それは死者が蘇るほど無理な話だった。物思いにふける綾子に、男が声をかけてきた。復員兵の格好をした男は、金を払うから話し相手になってくれという。連れ込み旅館に向かう途中、軍隊毛布をかけてくれた男のやさしさが身に染みる。何日も話し相手を求めて闇市をさまよっていたという男は、庄一と名乗り、帰郷したものの家族と会わずに東京に舞い戻ってきた理由を語りだす。(「歸郷」)

 戦争によって人生を引き裂かれた男たちを描く短編集。(集英社 1400円+税)

【連載】BOOKレビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末