「喪失の戦後史」平川克美氏

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 1973年の前と後で何がどう変わったか。敗戦からその年までは高い経済成長率が続き、昨日までの敵アメリカのシャープ兄弟を空手チョップでなぎ倒す力道山は、まさにヒーローを必要としている時代に、国民から望まれたヒーローだった。

 そして、世界チャンピオンと戦うまでに成長した不良少年・矢吹ジョーの成長物語である漫画「あしたのジョー」の連載が終わるのは、くしくも1973年である。

 まさに、“ヒーローが必要でなくなった時代”の到来を意味していたかのように。

 本書では、オイルショック以後の相対安定期から90年代に入り、縮小均衡へ、そして、人口減少社会へと向かう過渡期までを5章に分けて検証する。

「人口減少社会にふさわしい生き方とは何かというと、経済が右肩下がりになってきた時、求められるのはリーダーシップではなく、フォロワーシップなんです。本当に力のあるやつが集団の最後尾に位置取りして、落ちこぼれを一人ずつ救い、弱い者をケアしながら集団を生き延びさせることが大事です。そのことを哲学者の鷲田清一さんは『しんがりの思想』と言っています。それと方法はもうひとつ。みんなで少しずつ不満を分け合い、少しずつ損をしようという“ルーズ・ルーズ”の考え方なんですね。そうすれば貧しくても笑い合って生きていけるよね、と。まさに、落語にある『三方一両損』です。本当は日本人はそれが得意なはずなんですがね」(東洋経済新報社 1500円+税)

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