相撲の魅力が一から分かる本特集

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「大相撲の解剖図鑑」伊藤勝治監修

 豪栄道が横綱に挑戦する大相撲九州場所がいよいよ1週間後から始まる。この1年は、待望の日本人横綱誕生の機運が高まり、その熱が再びの大相撲ブームを巻き起こしている。そんなわけで、今週は、大相撲本場所直前、今からでも間に合う大相撲の魅力を一から教えてくれる本を紹介する。

 相撲は、ルールが簡単なゆえに、誰にも親しみやすい。それでも、テレビ中継では「右四つ」などといった素人には耳慣れない言葉が飛び交い、十両・幕内土俵入りの際に力士が化粧まわしをちょいと持ち上げる所作など、分からないこと、不思議なことだらけだ。

 本書は、本場所と地方巡業の違いから、土俵の構造や勝負規定(ルール)、そして「右四つ」といった取組キーワードなどの基本知識はもちろん、立ち合いの見方などの観戦のポイント、そして取組の進行だけでなく何役もこなす行司ら裏方たちの仕事まで、大相撲のすべてを分かりやすいイラストと解説で紹介する。

 土俵に上がった力士は、相撲を取る前にさまざまな所作を行う。もともと相撲は五穀豊穣を願う儀式として行われていたとされ、四股を踏むのは地中の邪気を踏みしめる神事から始まったなど、その所作の一つ一つに昔から言い伝えられた意味がある。

 例の土俵入りの際に、力士が化粧まわしを持ち上げる前後の一連の所作は、実は横綱の土俵入りの塵を(塵手水)・せり上がる・四股を踏むといった所作を簡略化したものだそうだ。

 一方、本場所では午後6時前に横綱が登場し、その日一番の盛り上がりを見せるが、実は取組は新弟子らによる前相撲から序ノ口へと朝の8時半ごろから始まっているという。

 歴史に残る名勝負や、関取の収入、「くびなげ(首投げ)」=「女性と関係を持つこと」などの相撲隠語まで、この一冊で「通」の仲間入り。(エクスナレッジ 1600円+税)

「知れば知るほど大相撲」舞の海秀平、はすまる、荒井太郎著

 元人気力士の舞の海秀平氏を案内役に大相撲の世界を案内してくれる手引書。

 相撲は勝敗の形もはっきりしているがゆえに、いい相撲・面白い相撲と、つまらない相撲では観客の反応が歴然と分かれる。しかし、氏によると、当の力士の心理は、何よりも早く決着をつけてホッとしたいというのが本音だという。鍛え上げられた同士がぶつかり合う恐怖と緊張は相当なもの。ゆえに「魅せる」ことまで考えて相撲を取っている力士は横綱でさえいないという。一日一番の真剣勝負だからこそ、誰もが魅了され、熱狂する名勝負が生まれるのだと説く。

 ほかに、漫画家・はすまるさんによる人気相撲漫画「すもうねこ」のスピンオフなど内容盛りだくさん。(徳間書店 1200円+税)

「迫力、おいしさ、奥深さをイッキ読み行こう!」大相撲観戦 服部祐兒監修

「歴史と伝統が息づく大相撲の世界観は、興行として完成された本場所でこそ体感できる」と、何よりも大相撲を生で観戦する魅力とその方法を中心に解説してくれるのが本書だ。

 本場所観戦には5つの楽しみがある。迫力ある取組を生で「見る」のはもちろん、国技館なら相撲博物館など館内にも見どころがたくさんある。その他、呼び出しの名調子や拍子木の打音などを「聴く」、黒子として働く往年の名力士らと「会う」、名物やご当地グルメを「食べる」、力士グッズなどのお土産を「買う」の5つの楽しみだ。

 それぞれの楽しみ方を豊富な写真やイラスト、ルポマンガで解説。さらに、無料で間近に力士たちを見ることができる朝稽古見学の方法やポイントなども紹介。(ナツメ社 1500円+税)

「相撲部屋の幸せな猫たち」荒汐部屋著 安藤青太写真

 こちらは、他とはちょっと趣向が変わった相撲本。荒汐部屋に暮らす猫のモルとムギを主人公にした写真集だ。

 元野良猫のモルと、元捨て猫のムギ。大きな力士たちと小さな2匹の猫が同居する部屋の日常を切り取る。朝、親方の膝にのって朝稽古を見守るモルは、野良猫体質が抜けないのか、部屋の外と中を自由に行き来する。一方のムギは3階にある力士たちのプライベートフロアから出ることがない引っ込み思案。力士たちと絶妙の距離感で接する猫たちは、厳しい世界で日々を生きる彼らの癒やしとなっていることが写真から伝わってくる。

 相撲部屋に猫、何とも意外な組み合わせが、見ているうちにこちらの心まで温かくしてくれるから不思議だ。(リブレ 1200円+税)

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