航空会社の安全性ランキングは信用できない!
ビジネスマンを対象とした雑誌では、毎年のように航空会社のランキングが特集される。機内食の豪華さやCAの接客内容などによる顧客満足度ランキングは、航空会社を選ぶためのひとつの目安だ。
しかし、杉江弘著「乗ってはいけない航空会社」(双葉社 1600円+税)では、何よりも重要な安全性については、このようなランキングをうのみにすると取り返しのつかないことになると警告している。
航空会社の安全性は、事故率や機材年齢、営業成績によって点数を加算して順位づける方法が世界各国で用いられている。しかし、これでは真の安全性は到底判断できない。なぜなら、保有機材が新しく、まだ事故を起こしていないというだけで、設立したばかりの新興航空会社でも上位にランキングされてしまうためだ。
また、顧客満足度が高い航空会社が安全と考えるのも大きな間違いだ。例えば、韓国を代表する航空会社のひとつであるアシアナ航空は、毎年のように「エアライン・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、サービス部門では華々しい受賞歴を持つ。しかし安全性について見てみると、パイロットの基本的な操作技術の欠如による重大事故が多発しており、組織的な問題があると考えざるを得ない。
パイロットの質や経験なども含めたヒューマンファクターズから安全性を考えると、実は日本の航空会社も危険水域にある。国土交通省によると、2014年度の安全上のトラブルのうち、人為的なミスに該当するヒューマンエラーは207件に上り、前年度の2倍にも急増している。日本では、労働条件の悪化によるパイロット不足が深刻な問題となっている他、再発防止よりも、犯人捜しに重きを置く事故調査のお粗末さも、安全性の低下に拍車をかけているようだ。
本書では、現在の安全性ナンバーワン航空会社に米国のユナイテッド航空を挙げながら、各国におけるパイロットの養成制度や近年発生した数多くの航空機事故についても原因を分析している。出張が多いビジネスマンは必読だ。