「役者人生、泣き笑い」西田敏行著

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 俳優・西田敏行は今年、芸能デビュー50周年、11月には古希を迎えた。人生の節目を機に語り下ろした初めての自伝。

 1947年、福島県郡山市の生まれ。映画が一番の娯楽だった時代、映画好きの養父母に連れられて邦画、洋画を見まくるうちに、「映画俳優になるぞ」と、早くも進路を決めた。人を面白がらせることが好きな美少年で、中学時代は大いにもてた。

 映画俳優はただの夢ではなく、本気。俳優を目指すなら東京だ、と、養父母を説き伏せ、東京の高校に入学する。だが、方言を笑われてへこみ、生来の陽気でお祭り好きが発揮できない。ひとりで行く上野動物園のゴリラが唯一の友達だった時期もあった。

 それでも目標は揺るがない。東京で舞台を見る機会が増え、演劇に目覚めて、青年座に入団。「写楽考」の主役に抜擢されたことが俳優としてのエポックとなった。若き日の西田に、劇団の大先輩はこう言った。

「トシ、おまえはうまい役者になるな。見事な役者にもなるな。面白みのある役者でいろ」

 その後の活躍ぶりはご存じの通り。この言葉は今も守られているようだ。「目標にしてきた役者を一人あげるとしたらジャック・レモン」だという。かつての美少年は「アンチ・ハンサム系」の役者として大成した。

 55歳のとき、無理がたたって心筋梗塞に倒れたが、一命を取り留めた。

 今年も頚椎の手術などで長期入院。それでも「神様がくれた休暇」と前向きに受け止めている。将軍、釣りバカ、ホームレス……役を通してあまたの人生を体験してきた役者のとりあえずの目標は、「田中角栄を演じること」だという。さて、どんな角栄を見せてくれるのだろう。(河出書房新社 1600円+税)

【連載】人間が面白い

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