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北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「突変世界 異境の水都」森岡浩之著

公開日: 更新日:

 2014年に刊行された「突変」は超面白い小説だった。突変とは、「突然変移」の略で、地球上の一定区画が突然消滅し、異世界の地球の区画と入れ替わってしまうというもの。要するに、こちらの一定区画があちらに飛び、代わりにあちらの一定区画がやってくるわけだが、問題は、やってくる区画に危険な生物がいっぱいいること。

 前作では、4年前に大阪が500万人近い人間とともに「時空転出」したと書かれていたが(それを「関西大移災」という)、本書はその時の大阪を描く長編である。つまり前作の前日譚だ。

 前作は町内会規模の「突変」だったが、今度は大規模な「突変」であるのがキモ。市役所や副知事、自衛隊などを一緒に転出してしまうのである。ところが中央政府とは隔絶している。そういう状況になると、どうなるか。主導権争いになるのだ。

 たまたまその時、関西にいた6人の国会議員を集めて臨時政府をつくる一派もいれば、これを機会に暴れまくろうとする暴力集団もいる。さらにそこに、宗教団体や大企業まで絡んでくるから大混乱。

 前作は日本SF大賞を受賞したようにSFの世界でも高く評価されたが、基本は自然災害を描くパニック小説なので、SFを読み慣れていない読者でも大丈夫。たっぷりと楽しめるだろう。

 文庫本600ページという大著だが、一気読みは必至。週末の午後の読書におすすめの一冊だ。(徳間書店 900円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

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