「カズサビーチ」山本一力著

公開日: 更新日:

 ペリー来航の8年前に、浦賀に入港を試みた米国の船があった。その名もマンハッタン号。クーパー船長が率いるその船は、マッコウクジラを追って日本近海を航行している途中、嵐に遭って漂流していた日本人水夫22人を発見して救助したのだ。

 船乗りとしては当然の救助活動だったが、大人数の水夫が加わったことで、船内はいきなり食料難に陥る。早く彼らを日本に送り届けようとするものの、鎖国政策がとられている日本の港に近づくということは被弾する危険性がある上に、激しい黒潮の流れに阻まれてしまう可能性も高かった。言葉も通じず、文化も異なる2つの国の境で、マンハッタン号は果たして無事に水夫を送り届けることができるのか……。

 本書は、日本とアメリカの初遭遇の史実を基に描かれた歴史小説。日本が開国するきっかけとなるペリー来航の布石となった史実が面白い。日米双方が異文化を前にして手探りで命のやりとりをする状況が、スリリングに描かれている。(新潮社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に