「竜宮電車」堀川アサコ著
27歳のシステムエンジニア・周作は、最近、いつも同じ夢を見る。駅で迷って、電車に間に合わない夢だ。周作が夢の中で乗ろうとしているのは、幼いときに叔母が旅行のお土産にくれた水色の模型と同じ電車だ。その模型はどこかのローカル私鉄らしく、1両編成で車体に天使の羽が描かれていた。今日も「竜宮電車」と名付けたその電車に乗れなかった周作が出社すると、会社が倒産していた。周作からのプロポーズを待っていた同棲中の恋人・志穂美も、翌朝、家を出て行ってしまう。周作は志穂美のことよりも、飾ってあった机から落ちて壊れた竜宮電車が気になる。(表題作)
人生に生き惑う人と神通力を持つ竜宮電車をめぐる3編を収めた連作集。(徳間書店 630円+税)