「かぼちゃを塩で煮る」牧野伊三夫著
今日は一体、どんなおいしいものを食べようか――。本書は、そんな思いで頭がいっぱいになっている「食いしん坊画家」による美食探求エッセーだ。たまの外食でおいしいものを食べようというならいざ知らず、毎日毎食においしさを追求するとなると、なかなか大変だ。
苦手だったかぼちゃ煮は、塩で煮ることで好物にしてしまう。まずいマグロを買ってしまったら、塩と酒を振って炭火で串焼きにして醤油とワサビで食べる。
さらにビジネスホテルに泊まれば、電磁湯沸かし器で前菜からメーンディッシュまで作って白ワインを飲むというのだから、その食いしん坊ぶりは筋金入り。
砂肝の前菜の作り方、料理が苦手でも3分で作れる酒のつまみの作り方など、酒飲みにはうれしい情報も満載。地方のご当地料理や海外のおいしい食事にも好奇心全開で向き合い、家庭での再現をもくろむ姿には脱帽するしかない。ページをめくるごとに、おいしい匂いが立ち上ってきそうだ。(幻冬舎 1300円+税)