「不発弾」相場英雄著
2015年9月、老舗の大手電機企業・三田電機に、巨額の「不適切会計」が存在することが日本実業新聞紙上に掲載された。警視庁キャリアの小堀秀明は、明らかな不正経理を「不適切会計」とする不自然な表記の背後に、何らかの強い力が働いたのではないかという疑念を持つ。
調査を進めるうちに浮かび上がってきたのは、古賀遼という金融コンサルタントの存在。激動の金融業界を生き延びてきた彼の活躍の陰には、ある日本経済のタブーが潜んでいた。
本書は、BSE問題を扱った「震える牛」や世界から孤立する日本産業を描いた「ガラパゴス」など、旬の社会問題を毎回見事な手腕でリアルに描く著者による最新作。今回は粉飾決算に手を染めた巨大企業を支えるために役割を果たしてきた金融コンサルタントの人生を、バブル期の熱狂やブラックマンデーなど、日本経済のたどってきた道とともに描いている。
なぜ、老舗の大手電機会社が1500億円もの粉飾に手を染めることになったのか。本書で描かれた今にも爆発しそうな経済の不発弾は、昨今ニュースで騒がれる話題とそっくりで背筋が凍る。(新潮社 1600円+税)