「『感情』の解剖図鑑」苫米地英人著

公開日: 更新日:

 人は一日の中で、喜怒哀楽の他にもさまざまな感情を繰り返しながら生きている。感情に生活が振り回されているといっても過言ではない。

 しかし、認知科学者の著者は、自分の意志と関係なく生じる感情に振り回されないように生きるのは、実はとても簡単だという。

 湧き上がる感情を抑えるのは難しいが、考え方ひとつで、感情を「エンターテインメント」「人生のスパイス」として味わうようにするというのだ。さらに、人生の目標達成のために、感情を上手に使うこともできると説く。

 本書は、思いのままコントロールするために、複雑な感情の一つ一つを図鑑化して徹底解剖、それぞれを自由自在に操る方法を伝授してくれる生き方指南書。

 例えば「後悔」。後悔とは、「過去の選択によっては、現実になっていた可能性のある世界(可能世界)」を想定し、それを現実と比較し、可能世界の方が良かったと感じることによって生まれる感情。

 そもそも現実世界と可能世界を比べるのは無意味であり、ありもしない可能世界よりも現実世界に良い評価を下す方がはるかに前向きで健全であると、後悔という感情をコントロールするさまざまな方法を伝授してくれる。

 感情には「恐怖」や「怒り」のように、もともと生命維持や種の保存のために必要だったが、現代ではほとんど必要ないネガティブなものと、親近感や感謝などポジティブなものがある。

 四十余にも及ぶ双方の感情の一つ一つを取り上げ、「幸福」な人とはトランス状態にある人、楽しむべき「不安」と手放すべき「不安」があるなど、それぞれのコントロールや付き合い方を解説してくれる。

 自分を振り回す感情の正体が分かるお薦め本。(誠文堂新光社 1400円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由