「水中少女」堀川アサコ著
1000年前、下半身だけの水死体でこの地に流れ着いた「おれ」は、たたりを恐れた当時の人に祭られ、神になった。といっても、元水死体なので神通力はなにもない。
ある夜、常駐する遠海神社の本殿に侵入してきた男が、見えないはずのおれに話しかけてきた。男は神様の御利益を売ってくれと、1000万円の札束を差し出す。男は、その金で心の闇から救い出して欲しいというが、その心の闇の正体を語ろうとはしない。金に釣られて引き受けてしまったおれに、男は必要経費として100万円だけ残し、帰って行く。男を尾行したおれは、自分とは別に水の足跡が男の後をつけているのに気が付く。(「表題作」)
他1編を収録した面白くもちょっと切ないヒューマンファンタジー集。(徳間書店 640円+税)