童話作家アンデルセンは性欲旺盛な変わり者だった?
「裸の王様」や「みにくいアヒルの子」「人魚姫」に「マッチ売りの少女」など、誰もが知る名作を生み出してきたデンマークの代表的な童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセン。さぞかし心優しく、純粋で夢にあふれた人物だったのだろうとイメージしてしまうが、実際の彼は、非常に変わり者だったようだ。
〈神経過敏のお姫様と、うぬぼれの強いフンコロガシと、捨てられた人魚姫と、みにくいアヒルの子を混ぜ合わせたような人間だった…〉
世界で最も愛される童話作家をこう分析しているのが、マイケル・ブース著、寺西のぶ子訳「ありのままのアンデルセン」(晶文社 2300円+税)だ。
著者は、日本のあらゆる場所を家族と共に訪れ、英国人の視点で日本の食文化を紹介した「英国一家、日本を食べる」などのエッセーで知られるフードジャーナリスト。本書でも、その行動力と洞察力がいかんなく発揮され、アンデルセンの人物像がひもとかれていく。
アンデルセンの著作の中でもあまり知られていない旅行記、「一詩人のバザール」にある通り、ヨーロッパを巡る旅に出掛けた著者。デンマークの語学学校で教材として渡された原語のアンデルセン作品が、英語訳されたものとはあまりにも異なるエキセントリックな内容であり、その人となりを知りたくなったためだ。
「一詩人――」には、ドイツにフィレンツェ、ローマ、ナポリなどのさまざまな場所で売春婦と接触した話が数多くつづられていた。また、毎日の自慰行為の回数までが記録され、アンデルセンが非常に精力旺盛だったことが見て取れるという。
一方、彼について記された伝記の多くには、“アンデルセンは生涯童貞であった”とつづられている。さらに自身でも墓に入るまで「純潔だ」と言い張っていたという。真実の姿は、一体どちらだったのか。
知っているようで知らない“人間・アンデルセン”に迫る本書。彼の童話を、違った角度から楽しむスパイスにもなりそうだ。