夏休みに知識をバージョンアップ 学び直し「教科書本」特集
「高校で教わりたかった生物」趙大衛編著、松田良一監訳・編著
日本の高校生の生物学の教科書と、世界の高校生の生物学の教科書を見比べたとき、決定的に異なる点があるらしい。それは、思春期の高校生なら知っておきたいはずの「ヒトの生物学」の欠如。妊娠や避妊、ドラッグ、DNAの異常やがんの発生、食中毒、食品添加物、大気汚染や喫煙が体に与える影響など、生活に根差したヒトの生物学に関する事項がすっぽり抜けている。
昭和25年当時の日本の高校生物の教科書は世界基準に近いものだったのだが、大学入試に対応した教科書ではヒトの生物学は軽視され、学習指導要領作成者や教科書の執筆者が理学部出身者に偏ってしまった。妊娠や出産などは保健体育などの授業で教条的・社会的に教わるだけで生物科学的な視点が消えてしまったのだ。
本書は、台湾で実際に使われている教科書を翻訳して掲載し、実際どんな点が違うのかを解説しながら、世界の教科書事情も紹介。現代の日本の高校生物教育に一石を投じている。(日本評論社 1800円+税)