愛機や憧れだった一台と再会できる
「ニッポン ラジカセ大図鑑」スタイルワークス企画制作著
ネット配信される音楽をスマホで楽しむ若者たちには想像もできないだろうが、まだウォークマンもCDもこの世になかった時代、若者たちの友は「ラジオカセットレコーダー=ラジカセ」だった。昭和の遺物として、一度は忘れ去られたラジカセが今、静かなブームを呼んでいるという。
本書は、各メーカーが競い合って作り出してきたラジカセの名機の数々を紹介しながら、その輝かしい歴史を俯瞰するビジュアル図鑑。
最も古い国産ラジカセは、1967年に松下電器産業(現パナソニック)が発売した「RQ―231」。大卒初任給が約3万円だった当時の販売価格が3万5800円というから、かなりの高額商品だったといえる。
その後、ラジカセは高音質化を進めるとともに、付属マイクのワイヤレス化や、ステレオ化、流行のBCL(短波による国際放送)対応などで中高生の人気を集めていく。
70年代半ばには、戸外に持ち出してSLの走行音などを録音する「生録」や、FM放送を録音する「エアチェック」ブームが到来。
80年代に入るとカセット同士でダビングできる「Wラジカセ」や、カセットを裏返さなくても再生できるオートリバース機能などが登場。さらにリズムマシンや、キーボードを搭載した機種など多様化が進む。
CDの登場でデジタル化するとともに、80年代後半には、重低音機能やCDプレーヤーを搭載して大型化し、当時のバブル経済にひっかけて「バブルラジカセ」と呼ばれるようになっていく。
誕生から興隆まで、約20年の技術や流行の変遷を追いながら、当時の人々に愛されたラジカセ250台以上を紹介。
愛用機や、憧れの一台との再会に青春の日々が蘇る。
(スタンダーズ 1833円+税)