「人生散歩術」岡崎武志著

公開日: 更新日:

 吉田健一の文学におけるテーマのひとつが「時間」だ。吉田の「時をたたせる為に」の中に「この忙しいというのは時間がないことである。或はそれを意味するものと受け取ることに疑いをもつものは少なくて時間がなくなってもまだ人間が忙しくしていられるかどうか考えようともしないらしい」という文がある。吉田は「時間」というものの意味を徹底的に考え抜いて文章に書く。吉田の文は速読に適さず、「意味の堂々巡りのように見えて、くねくねと論理の散歩道をさまよいながら、いつか広く明るい野に出る」、それが吉田健一を「読む」ということだと著者は言う。

 井伏鱒二、高田渡らの作品を通して、読むことの楽しさを教えてくれる一冊。

(芸術新聞社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  4. 4

    永野芽郁は大河とラジオは先手を打つように辞退したが…今のところ「謹慎」の発表がない理由

  5. 5

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  1. 6

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  2. 7

    威圧的指導に選手反発、脱走者まで…新体操強化本部長パワハラ指導の根源はロシア依存

  3. 8

    ガーシー氏“暴露”…元アイドルらが王族らに買われる闇オーディション「サウジ案件」を業界人語る

  4. 9

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  5. 10

    内野聖陽が見せる父親の背中…15年ぶり主演ドラマ「PJ」は《パワハラ》《愛情》《ホームドラマ》の「ちゃんぽん」だ