「太陽と乙女」森見登美彦著
「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー、「夜は短し歩けよ乙女」や「ペンギン・ハイウェイ」など話題作で人気を得ている著者のエッセー集。
400ページを超える本書には、読書について、好きな映画や食べ物、自分の小説、散歩や旅、身辺雑記といった部立てのもとに新旧さまざまなエッセーの他、書き下ろしとして、ファンタジーノベル大賞受賞時の日記を収録した「『森見登美彦日記』を読む」と、スランプで小説を書けなかった時期に台湾の雑誌に連載したコラム「空転小説家」も初収録されている。要するに、デビュー以来14年に及ぶ作家生活のなかで、小説以外に書いてきた文章のほとんどを収めたエッセー大全集である。
ここには作家・森見登美彦の趣味嗜好、小説の舞台裏、京都の学生時代に6年間暮らした4畳半の下宿生活、恋愛と結婚といったことまでが虚実取り交ぜて面白おかしく書かれている。ファンは無論、小説を読んだことのない人でも、読み終わったときには、この作家をとても近しい存在に感じることだろう。
(新潮社 1600円+税)