「泥濘」黒川博行著
表向きは、建築工事や解体土木工事の仲介斡旋をする経営コンサルタント。しかし、その収入の半分以上が、建築現場にうろつくヤクザや企業舎弟を、ヤクザを使って抑えるサバキの仕事で賄う二宮は、関わるたびに酷い目に遭いながらも縁が切れない桑原という極道に毎回悩まされている。
ある日、ふらりとやって来た桑原は、警察OBが絡んでいるという歯科医の診療報酬詐欺の新聞記事を二宮に見せる。どうやら、今度はこの老人を食い物にする彼らをターゲットに、金を得る魂胆らしい。嫌々ながらも桑原に連れ出された二宮は、老人相手の貧困ビジネスに触手を伸ばしていた白姚会と桑原をつなぐ役目をさせられることになるのだが……。
本作は、二宮と桑原のコンビが活躍する疫病神シリーズの最新作。今回も、桑原の策略に巻き込まれた二宮。しかし二度と関わらないつもりの桑原にも命の危機が。最悪の状況下で繰り広げられる2人の夫婦漫才のようなやりとりが絶妙だ。
(文藝春秋 1800円+税)