「大阪の教科書」橋爪紳也監修、創元社編集部編
表紙に入っているが「大阪検定公式テキスト ビジュアル入門編」である。
2009年に始まった「なにわなんでも大阪検定」は、大阪商工会議所が主催する「ご当地検定」であり今年、10回目を迎える。試験日は10月21日。で、出題される問題は全部で175問。どんなんかというと、
<国語/大阪言葉で食べ物に関する名詞でないものはどれでしょう?
1あめちゃん 2かしわ 3ややこ 4あて
社会/阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道は、沿線の住宅地経営やターミナルデパートの創業など様々な手法で事業を拡大していきました。これらの斬新な経営戦略を次々と打ち出した経営者は誰でしょう?
1早川徳次 2松本重太郎 3小林一三 4弘世助三郎>
といったものだ。これを「おもろい」と思うのか「しょうもな」と思うのかはそれぞれだが、こういう大阪についての「問い/答え」のセットを増やすことを目的とするために、この本が編集されたとは思えない。
で、その大阪とはどういうところか?
「お笑い・阪神タイガース・おばちゃん・こなもの」であり、四天王寺と石山本願寺の「宗教都市」であり、難波宮と大阪城の「政治都市」でもある。また摂津・河内・和泉それぞれ固有の歴史と文化の土地柄があり、話される言葉も違う。つまりどういう座標軸でこの都市を見るかで、まったく違った大阪像を結ぶことになる。
それが“あほ”や“いちびり”の大阪弁であり、豊臣家滅亡の大坂夏の陣であり、漫画のじゃりン子チエであったりするわけだが、この本の良さは、それらのネタ自体のチョイスのみならず、気の利いた写真や図版の多用でとてもユニークな「大阪本」に仕上がっているところだ。
知的好奇心や都市ブランド向上といったものでなく、「おもろい大阪をおもろがって編集する」。その意図がすごくよい。(創元社 1500円+税)