「蕪村 己が身の闇より吼て」小嵐九八郎著

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 江戸時代の中頃、将軍吉宗の時代。大坂湾から京都へ続く淀川沿いの土手を一人の少年が裸足で走っていた。その着物の袖と襟元には赤黒い染みが広がっている。15歳になる少年は人をあやめて故郷から逃げ出しているところだった。

 しばらくは鴨川の河原でこじきをしながら糊口をしのいでいたが、仲間に襲われほどなく遁走。その後、僧侶の弁空に拾われ寺男に。寺で俳諧と絵を学んだ男は、俳諧を飯の種にしようと江戸へ向かう。俳諧師・宋阿に弟子入りして宰鳥と名乗る。そこから幾変転、号を蕪村とし、ふたたび京へ戻り、還俗して与謝姓を名乗る。俳人・与謝蕪村の誕生である。

 画人としても、池大雅、伊藤若冲、円山応挙らと並び、当時の京都画壇の重要な一角を占めるようになる。とはいえ、己の罪過を生涯胸に抱えながら、蕪村の心は定まらぬままさまよい続ける……。

 20歳以前の生い立ちがほとんどわかっていない与謝蕪村の知られざる闇の迷宮に大胆に分け入り、その精神の内奥に迫る渾身の歴史長編。

 (講談社 1950円+税)

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