「翼竜館の宝石商人」高野史緒著

公開日: 更新日:

 1662年の晩夏、アムステルダムに奇妙な噂が流れた。市庁舎に飾られているレンブラントが描いた歴史画の中から、古代ローマの英雄、キウィリウスが飛び出して、夜な夜な回廊をさまよい歩くのだという。そんな折、宝石商人ホーヘフェーンがペストで死に、郊外に埋葬された。だが、その翌日、彼とうり二つの男が館の密室で発見された。

 偶然、死の前の晩にホーヘフェーンと会っていたレンブラントの息子ティトゥスと記憶を失った謎の男ナンドは、入れ違いに館に入っていった外科医のカルコーエンとペスト専門医がなんらかの関わりがあるはずだと、周辺の事情を探り始める。すると、ホーヘフェーンには幼い頃に生き別れとなっていた双子の弟がいたことが判明。これで解決と思いきや、この事件にはさらなる深い闇がはらまれていたのである――。

 新興著しい国際都市アムステルダムを舞台にレンブラント、ペスト、密輸といった道具立てを組み入れて壮麗な歴史絵巻に仕立てた、傑作ミステリー。

(講談社 1550円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由