天才物理学者が“時間”の常識を根底から覆す

公開日: 更新日:

 現代人が、追われたり縛られたりしている“時間”。ところで、時間とはいったい何なのか。カルロ・ロヴェッリ著、冨永星訳「時間は存在しない」(NHK出版 2000円+税)では、スティーブン・ホーキング博士の再来ともいわれる物理学者が、時間の正体に迫っている。

 それは、誰にでも共通なわけではなく、相対的な存在であり、宇宙の至るところで異なる時間の流れがあると著者はいう。ブラックホールの近くでは、極めて強い重力によって時間の進み方が遅くなり、そこでの一瞬が他の場所の永遠にも匹敵する。

 もっと身近な場所でも似たようなことは起こる。高い山の頂上にいる人と平地にいる人では、受ける重力の大きさが違うために時間の流れが違う。知覚できないにせよ、平地の方が重力が大きいため、山頂にいる人よりも時間がゆっくりと進む。同じ理屈で、猛スピードで移動している人も、じっとしている人より時の流れが遅くなるのだ。

 さらに著者は、“今”という概念も物理学で覆してみせている。例えば、ニューヨークに出張中、東京に住む恋人に「今、何してる?」と電話をかけたとする。しかし、この質問は意味をなさない。なぜなら、“今”というのは局地的な存在であるためだ。

 恋人の声が東京からニューヨークに届くまでには、数ミリ秒の時間を要する。つまり、あなたが知り得るのは恋人が数ミリ秒前に行っていたこと。遠くにあるのは過去であり、この瞬間よりも前に起きた出来事。“今”というのは、場所に縛られた概念であり、場所と切り離された時間はないと解説している。

 時間の常識を根底から変える本書。明日から、あなたの周りの時間の流れも変わるかも?



最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大阪万博会場の孤島「夢洲」で水のトラブル続出の必然…トイレ故障も虫大量発生も原因は同じ

  2. 2

    巨人阿部監督がオンカジ送検の増田大輝を「禊降格」しないワケ…《中心でなくても、いないと困る選手》

  3. 3

    オンカジ騒動 巨人オコエ瑠偉が「バクダン」投下!《楽天の先輩》実名公表に現実味

  4. 4

    趣里の結婚で揺れる水谷ファミリーと「希代のワル」と対峙した梅宮ファミリー…当時と現在の決定的な違い

  5. 5

    中国企業が発表した「ナトリウムイオン電池」の威力…リチウムイオン電池に代わる新たな選択肢に

  1. 6

    永野芽郁「かくかくしかじか」"強行突破"で慌しい動き…フジCM中止も《東村アキコ役は適役》との声が

  2. 7

    永野芽郁と田中圭は文春砲第2弾も“全否定”で降参せず…後を絶たない「LINE流出」は身内から?

  3. 8

    渋谷区と世田谷区がマイナ保険証と資格確認書の「2枚持ち」認める…自治体の謀反がいよいよ始まった

  4. 9

    水谷豊に“忖度”?NHK『BE:FIRST』特集放送に批判…民放も事務所も三山凌輝を“処分”できない事情

  5. 10

    頭が痛いのは水谷豊だけじゃない…三山凌輝スキャンダルで間宮祥太朗「イグナイト」“爆死”へ加速危機