世界のトピックスが分かるマンガエッセー本

公開日: 更新日:

「半ダース介護」井上きみどり著

 読書の秋到来。いつもは活字派、あるいは日夜活字と格闘している諸兄は、今秋は趣向を変えて、マンガエッセーはいかが。

 介護の日常生活や素朴な疑問から始まった墓活ルポ、なかなか知ることのない内戦下の生活、性教育先進国・北欧の子どもたちの恋と性にまつわる話まで、肩の凝らない4冊をご堪能あれ。

 夫と娘と3人で暮らす主婦のハルコは50歳。「スープがちょっと冷める」距離にハルコの両親、夫の「生み」と「育て」の2組の両親と、夫の祖母90歳が暮らしていた。そんなハルコに、突然介護が降りかかる。

 ハルコの実父ががんで亡くなり、夫の実父をみとり、やれやれと思った直後、今度は夫の養父・くまパパ(75歳)が前立腺がんで倒れたのだ。

 術後、自己排尿ができなくなったくまパパの「シモの世話」をするために毎日通い、それぞれの親宅にも食事を運び、病院の送迎と目の回る忙しさだ。そんなさなか、夫の実母に認知症の彼氏ができてビックリ。元気だった祖母にも認知症の症状が。そして、いつもポジティブなハルコがついにダウンする。

 6人のシニアを1人で介護した日々をコミカルにつづったコミックエッセー。

 (集英社 1200円+税)

「まんが 墓活」井上ミノル著

「墓活」とは、田舎にある墓を移したり、墓じまいすること。著者自身も女姉妹で、母方は女系のため、いずれ直面する問題である。いずれぶち当たるなら取材にかこつけて調べてしまえ、と墓にまつわるアレコレを集めた一冊。

 一人っ子やシングルも多い昨今、墓の選択肢は広がっている。たとえば婚姻した両家を共に埋葬する「両家墓」や骨壺に納めたまま手元に置く「手元供養」、民間墓地ではペットと一緒に入れる墓も。一方、気を付けたいのは「永代供養」は永遠ではないということ。霊園によって期限が異なるので確認が必要だ。

 ほかにも檀家を離れる際にお気持ちを包む「離檀料」の相場は10万~20万円、数年間墓を放置していたら撤去されていたケースの法律相談、墓の相談をするなら石材店がおすすめ、というプチ情報まで。お墓の疑問がスッキリ解決。

 (140B 1200円+税)

「北欧に学ぶ 好きな人ができたら、どうする?」アンネッテ・ヘアツォーク著、枇谷玲子訳

 ヴィオラとストームはお互い気になる存在。体育祭をきっかけに距離が縮まるが、そこから先に踏み出せないでいた。そんな2人の物語を、表側からはヴィオラの女子編、裏側からはストームの男子編で、それぞれの気持ちや体の仕組みなどをマンガでつづる。

 同じクラスのストームのことを考えると胸がいっぱいになるヴィオラは、ある日、親友のフローラに打ち明けた。するとフローラがストームに気持ちを聞いてくれることに。答えを持ってきたのはストームの友達で、「好きじゃねえよ、だってさ」だった。

 初めての失恋にヴィオラは落ち込み、気分はアンコントロール。でもおばあちゃんが言った通り、時が傷を癒やしてくれた。

 悲しみと距離ができるころ、セックスにも興味が出てきた。

 フローラと「経験したら大人になった気分になるかな」「セックスしたくなると、どうなるか知ってる?」なんて話もした。

 セックスの相手はストームならいいな……。

 一方、ストームの物語は、ヴィオラの体験を男子の側からの目線で伝える。体育祭のあと、一緒に帰ろうと誘えなかったことを悔いつつ、キスをするシーンや、逆に嫌われるシーンを妄想し、身もだえする。

 学校ではセックスの授業があり、ストームはじめ男子生徒は大騒ぎだ。コンドームの使い方を習い、先生の「初めてのセックスに不安はつきもの」とアドバイスに耳を傾けるも、ストームはヴィオラの前で、うっかりエッチな発言をして「しまった!」とまた後悔。その直後、級友たちにヴィオラとのことをからかわれたストームは、つい心にもないことを言ってしまうのだった……。

 脳やホルモンの仕組み、哲学者の言葉から文化で異なる恋と結婚制度など、さまざまな角度から性と恋を学べる、性教育先進国デンマークならではの学習マンガ。

 (晶文社 1750円+税)

「ZENOBIA(ゼノビア)」モーテン・デュアー/文ラース・ホーネマン/絵、荒木美弥子訳

 小さな村に住む少女アミーナは、街に出掛けたまま戻らぬ両親を一人待ち続けていた。戦闘車が家の前を走り、建物の向こうに黒い煙が上がる。シリア内戦の影が近づいてくるが、両親は戻ってこない。戦火を逃れるため、アミーナはボートで国を脱出しようとするが、大勢の人を乗せた小船は、荒波にのまれ転覆してしまう。

 暗く深い海の中でアミーナは、村での生活を思い出していた。母とかくれんぼ遊び、晩ご飯のためにぶどうの葉でご飯をくるむドルマを作ったこと。母が話してくれた、はるか昔のシリアの女王ゼノビアのこと。連れ出してくれたおじさんと船に乗るまでの旅路と、おじさんとの別れ。海に沈みながらアミーナの回想は続く。北欧グラフィックの繊細なイラストで描く、シリア内戦下に生きる少女の物語。世界17の国と地域で翻訳された話題の書だ。

 (サウザンブックス社 2300円+税)

【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末