最新情報満載の歴史本特集

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「とてつもない失敗の世界史」トム・フィリップス著 禰冝田亜希訳

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉がある通り、人間が今日まで積み上げてきた歴史の中には、普遍的ともいえるさまざまな英知が隠れている。たまには流行を追う競争から降りて、先人の知恵に耳を傾けてみてはどうだろう。そこで今回は、失敗、化学、気候、哲学と宗教、人口の5つの切り口から見た歴史本をご紹介!



 人間が世界中で起こした大失敗は数多く存在する。そんな人間のトコトンダメな本性を、クールに語りつくしているのが本書だ。

 人間の脳は、混沌とした世界に誤ったパターンを見いだす癖があり、今ある危険を回避する思考で精いっぱいなので、将来子孫を絶滅させてしまうとしても、今を生き残る行動をとると著者はいう。バケツを盗んだせいで戦争が始まったり、遺跡が近所の道路補修のために切り崩されたりと人々がやらかした失敗の数々が紹介されつつも、ぞっとするのが失敗が過去にとどまらないことだ。

 氷の下で眠っていた病原体が地球温暖化で息を吹き返す可能性や、宇宙にゴミを捨てるのをやめなかったせいでゴミの雲が地球を覆う未来など、私たちを待ち受ける失敗を見せられると笑えなくなってくる。

(河出書房新社 2300円+税)

「気候と人間の歴史」E・ル=ロワ=ラデュリ著 稲垣文雄訳

 異常気象が続く昨今、気候の変化が気になっている人も多いのではないだろうか。そんなときに、手にとってみたいのが本書。全3巻で構成されているシリーズ第1巻となる本書では、13~18世紀における欧州の気候について、氷河の規模の記録やブドウや小麦の作況状況などのデータに基づいて言及している。気候が人間に与える影響の考察を見れば、長期的な視点で捉えればむしろ問題のない時期の方が少ないことに気づかされる。

 たとえば、14世紀には小氷期と呼ばれる氷河拡張の時期が訪れ、厳しい冬の後に大規模な干ばつで各地が飢饉に陥っている。また17世紀や18世紀には高温によって赤痢が拡大したり、雨が降りやまず作物の不作も続いた。婚姻数や暴動の増減さえ左右する、気候の影響の大きさに改めて震撼する。

(藤原書店 8800円+税)

「哲学と宗教 全史」出口治明著

 人工知能の進歩が目覚ましい昨今、ややこしいことはすべてAIに任せたいのはやまやまだが、現実には格差や貧困、差別やテロなど頭を悩ます問題は広がる一方だ。本書は、そんな混沌とした社会を大きくとらえるツールとして哲学と宗教の有用性を説く。

 たとえば中国で誕生した諸子百家の思想は、心を寄せやすい思想を階層別に用意したことで社会の安定に寄与したのではないかと著者はいう。一般民衆には親や家族を大切にする儒教が説かれ、インテリには老荘思想が用意されるといったように、すみ分けによって社会が安定したというのだ。ほかにも古代ギリシャから現代に至る100人以上の哲学者・宗教者の思索の足跡がずらり。最新情報ばかり追いかけるのでなく、先人の知恵に新たな発想のヒントを探してみてはいかが。

(ダイヤモンド社 2400円+税)

「人口で語る世界史」ポール・モーランド著渡会圭子訳

 18世紀には10億人にも満たなかった世界の人口が、今や70億人になっている。この200年の間に何が起きたのか。本書は、18世紀以降の世界の人口変動から世界史を語ったもの。かつては土地で生産される食糧の供給に応じて人口は増減していたが、産業革命以降、農作物生産量の増加や輸送機関の発達、公衆衛生環境の向上などによって、死亡率の低下や移民の流入などが生じて人口変動が激化したのが18世紀以降だったからだ。

 本書では、米国、欧州、ロシア、中国、アフリカに加えて、今までにない超少子高齢化社会が到来している日本の人口増減の歴史についても言及。大日本帝国時代の人口政策がドイツと似ていたことや、これまで平均寿命が延びたことが出生率低下を補っていたことなどを指摘している。

(文藝春秋 2200円+税)

「元素から見た化学と人類の歴史」アン・ルーニー著八木元央訳

 物質は何からできているのか。何千年にもわたって人類が考えてきたこの問いに対し、現在私たちは「118種類の元素がすべての物質をつくっている」とするモデルを使っている。原子量を基準に元素を並べた周期表を作り始めたのは19世紀だが、それ以前から人は物質の成り立ちについてさまざまな仮説を立て探求してきた。本書は、そんな元素をめぐる考察の歴史をたどったもの。

 土、水、空、火の4つを基本元素と考えていた古代に始まり、錬金術師の試行錯誤、加工品としての鉄や目に見えない大気の研究など、創成期から今に至るまでの歴史をカラフルな資料と共に紹介。化学教師のメンデレーエフが、カードゲームのソリティアにヒントを得て元素配列周期表の配列をひらめいたことなど、興味深いエピソードも掲載されている。

(原書房 2800円+税)

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