「アトピーの治し方」大塚篤司著
アトピー治療の情報には“正しいもの”と同じくらい“正しくないもの”があふれていると、これまで1万人以上の患者を診察してきた皮膚科医の著者は警告する。本書では、間違ったアトピー治療法を見分ける方法と共に、医学的に信頼度の高い研究結果に基づいたアトピー治療のスタンダードについて解説している。ニセ医学にだまされないためには、「相関関係と因果関係は異なる」ことを知っておくのがいいという。相関関係とは「AとBとに関係がある」、因果関係は「Bの原因はAである」という意味で、まったく異なるものだ。
例えば、「南米のある地域ではアトピーの患者が少なく、住民はある果物を多く食べている。その果物の成分を抽出したサプリはアトピーに効く」という文章。これは相関関係をあたかも因果関係のように紹介している例で、決して医学とは呼べない。正しくないアトピーの治療法には相関関係でミスリードしているものが多いため、あやしい健康情報に触れたときには「相関関係があるだけで因果関係はないのでは?」と疑う視点を持っておくとよいという。
他にも、試験管や動物実験による研究結果をうたうものは信頼度が低い、悪用されやすい「4つのバイアス」と心理作用など、正しくないアトピー治療から身を守るヒントを数多く解説している。
本書では、アトピーにおける標準治療、つまりステロイド外用剤に対する誤解やデマをひもときながら、2019年時点で開発中の5つの新薬についても紹介。亜鉛や乳酸菌、ビタミンDや除去食など、各種の民間療法もエビデンスで検証している。正しくない治療法で苦痛を長引かせないためにも、情報の見極め方を知っておきたい。
(ダイヤモンド社 1600円+税)