「エンド・オブ・ライフ」佐々涼子著
在宅の患者を支える渡辺西賀茂診療所に、京大医学部付属病院から、末期がんの木谷重美を一時帰宅させたいという打診があった。
家族で潮干狩りをするという、たった一日の思い出づくりをかなえるために、酸素ボンベなどを車に載せて、男性看護師、森山文則ら3人が同行することになった。車椅子で海に入り、重美は潮干狩りに興じる子供たちを見守っていた。帰りの車の中で呼吸状態が悪化した重美を、家族の希望を入れて、森山は自宅に送り届けた。重美は自宅で息を引き取る。
5年後、森山にすい臓がんが見つかった。森山は取材に来た著者に「僕は僕自身であって、『がん患者』という名前の人間ではない。普段はがんを忘れ、日常生活という、僕の『人生』を生きていきたいんです」と語った。
在宅患者をサポートする終末医療を描くノンフィクション。
(集英社インターナショナル 1700円+税)