「法の雨」下村敦史著
裁判での逆転無罪は年間20件程度なのに、1人で15件もの無罪判決を出している「無罪病判事」嘉瀬清一。この日は病院内での殺人事件の法廷だった。
入院患者の10歳の少女が、看護師の水島勇作が寝ている患者の顔に枕を押し当てているのを見たと証言した。弁護士が少女に、水島を見た時間を尋ねると「10時15分」と答えた。だが、その前日や前々日に水島を見た時間は答えられない。嘉瀬は「被告人は無罪」と言い渡す。
その直後、体が横倒しになり、法壇から転げ落ちた。嘉瀬は救急車で搬送されたが、宣告された判決は有効だった。その後、無罪となった看護師が殺されるという事件が発生する。
法廷の「正義」を描く問題作。
(徳間書店 1600円+税)