「じんかん」今村翔吾著

公開日: 更新日:

 狩野又九郎は松永久秀の謀反を信長に報じねばならないことで苛立っていた。これが初めてではない。だが、前回は皆の予想に反して許された。今回も信長は鎮圧には嫡男の信忠を行かせると言いながら「降伏すれば赦(ゆる)すとも伝えよ」と続けた。久秀は信長に許されることを知っていた。

 久秀の信長への2通の書状のひとつは謀反の宣言書だったが、2通目は信長が降伏を許した場合の条件を問うものだった。書状には「即刻、37人の家族を救って頂きたい」とある。信長が「名は何と記してある」と尋ねた。「九兵衛……」と答えると、信長の口元が綻んだ。

 主を殺し、将軍を暗殺した悪人として知られる松永久秀の人生を描く長編時代小説。

(講談社 1900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に