「デヴィッド・ボウイCHANGES」クリス・ウェルチ著 富永晶子訳

公開日: 更新日:

 希代のスーパースター、デヴィッド・ボウイがこの世を去ってはや6年。生きていれば今年75歳を迎えたはずの氏の人生の軌跡を残された膨大な写真と共に振り返るビジュアル年代記。

 のちにボウイとなる少年は、1947年1月、ロンドンでデヴィッド・ロバート・ジョーンズとして生を受け、10歳年上の異父兄からジャズや詩、ビートニク・カルチャーの魅力を教わりながら育つ。

 10歳の頃、所属していたサッカーチームの集合写真に写るデヴィッド少年は、輝くような金髪に端正な顔立ちで、スターの片りんをすでにのぞかせている。

 ハンサムで個性的なルックスと才能に恵まれた氏だが、その実力が世に認められるまでの道のりは険しかった。

 進学した中学校で出会った友人、ジョージ・アンダーウッドとともにロックンロールのルーツである正統派リズム&ブルースに傾倒し、1962年、初のバンド「コンラッズ」を結成し音楽活動がスタート。

 ちなみにボウイの青い瞳の片方が茶色もしくは緑色に見えるのは、女の子をめぐる喧嘩でアンダーウッドに殴られ、左の目の虹彩がマヒするけがを負ったからだという。

 その後、レコードレーベルを5回も替え、6年にわたって試行錯誤を繰り返すも、ヒットに恵まれなかったボウイ(その間にマネジャーの勧めでデヴィッド・ボウイに改名。当時の人気バンドに彼が名乗っていたデイヴィー・ジョーンズと同名のミュージシャンがいたためだという)だが、1969年にリリースした「スペイス・オディティ」の大ヒットによって、ついにポップスターの座を手にする。

 同曲も、発売当初は売れ行きが悪く、チャート入りしたものの下位に低迷、1週間でレコード会社が回収を始めた。

 だが、ラジオのDJがヘビーローテーションした結果、人気に火が付き、13週連続でシングルチャートにとどまるロングヒットになったという。

「スペイス・オディティ」で宇宙空間を漂う「トム少佐」になりきったボウイは、さらに進化を遂げ、髪を真っ赤に染め、扇情的な衣装を身にまとった全能のロックスター「ジギー・スターダスト」となって地球に降臨、世界に旋風を巻き起こす。

 ジギーは「ゲイ」でなければならないと、インタビューでは「わたしはゲイだ。いままでもこれからも」と公言(母親が衝撃を受けないよう事前に電話をして真実ではないと伝えてもいたらしい)。

 以降も、次々と非現実的なペルソナを作り出しては、実生活でそのキャラクターを生き続けた氏の人生を詳細に解説。

 私生活のスナップ写真から、ステージ写真、ポートレートなどを、多くの未公開写真も交えながら紹介。

 見ているだけで、名曲の数々と共に偉大なスターのセンセーショナルなパフォーマンスが脳裏に蘇る。

(竹書房 4400円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」