「私の盲端(もうたん)」朝比奈秋著
大学生の涼子は直腸の付け根にできた腫瘍を摘出したことから、腹部に人工肛門(ストーマパウチ)をつけることに。ある日、便意を感じて、いつも利用している科学館のバリアフリートイレに駆け込んだ。カーディガンとブラウスを脱いでストーマパウチの中身を処理し、ドアを開けると男が立っていた。無視して歩き出すと、「おれも、おんなじオストメイトや」と声をかけられた。男がTシャツをまくって人工肛門を見せると、涼子は立ち去ろうとしたが、転勤してきたばかりでこちらに友達がいないと言う男に誘われて、科学館の喫茶室に入る。
現役医師が、オストメイトの男女の奇妙な交流を描く表題作ほか1編。
(朝日新聞出版 1760円)