「サハマンション」チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳

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 舞台は、自治体が企業に売り払われた都市国家「タウン」。そこには専門知識と経済力を持つLと呼ばれる住民と、2年ごとの審査を受けて在留が認められるL2と呼ばれる人と、LでもL2でもないサハと呼ばれる人たちがいた。物語は、サハたちが流れ着いたサハマンションで展開する彼らの運命を描く。

 主軸となる登場人物は、3年前にある理由でサハマンションの住人となったジンキョンという姉とトギョンという弟のふたりだ。

 トギョンはLの小児科医でありながらサハマンションの子どもに医療行為をしていたスーと恋仲だったが、スーが病院の備品や薬を持ち出して医療をしていたことが問題になって医師免許を剥奪され、2人は心中を決意した。ところがトギョンが生き残り、殺人犯として追われる身になったことで、姉のジンキョンの周辺にも不穏な空気が漂い始める……。

 本書は、ベストセラー「82年生まれ、キム・ジヨン」の著者による2019年刊行作品の翻訳版。事実上の独裁国家タウンの格差問題や感染症の流行など、その世界は架空とは思えないほどのリアリティーに満ちている。

(筑摩書房 1650円)

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