「赤と青とエスキース」青山美智子著

公開日: 更新日:

 メルボルンに交換留学で来た大学生のレイは、ある日、知人に誘われたバーベキューで、ブーの愛称で呼ばれる同い年の日系人男性に出会う。ブーとは不思議と話も弾んだが、誰にでも親切で人気者の彼にレイは警戒。しかし、「友達をつくる」ためと考え直し、会うようになる。

 やがてお互いに引かれるが、ある理由から「帰国するまでの期間限定」の恋人関係をスタート。そして帰国が近づいてきた1月、レイはブーから「友人の画のモデルになってほしい。エスキース(下絵)だけで終わらせるから」と頼まれる──。

 今年、「お探し物は図書室まで」が本屋大賞2位になった著者の最新作。メルボルンの画家の卵が手掛けた一枚の「エスキース」が時代と場所を移りゆきながら、人々の人生と思いを紡ぐ5編から成る連作短編集だ。

 テーマに描かれているのは「ふたり」。恋人同士、額装家と師匠、売れっ子になった後輩と対談することになった漫画家、体を壊し仕事に行けなくなった女性と女上司など、「ふたり」の間に起こった出来事を機に、自分に向けられていた思わぬ愛情を知り、人生が展開していく──。

 読み進むにつれ、登場人物たちの謎も明らかに。読後は温かい気持ちになる、仕掛けに満ちた連作集だ。

(PHP研究所 1650円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  4. 4
    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

  5. 5
    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  2. 7
    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

  3. 8
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 9
    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

  5. 10
    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し