「母影(おもかげ)」尾崎世界観著
「母影(おもかげ)」尾崎世界観著
小学生の「私」は、放課後に遊ぶ相手もなく、いつもお母さんが働くマッサージ店で仕事が終わるのを待っている。店のお客さんは、前は近所のおばさんたちだったのに、最近はおじさんばかりだ。
空いたベッドの上で、私は息を殺して、隣のベッドのカーテンに映るお母さんとおじさんの影を見つめる。お母さんが客に何をしているのか、私にはわからない。家に帰るとき、私はお母さんと手をつなぎたくないと感じる日もある。お母さんは私にご飯を食べさせるとまた仕事に出かけていく。
ある朝、目覚めると、お客さんにもらったハムスターが家にいた。それは学校で同級生が見せびらかしていたハムスターだった。あの子のお父さんもお母さんの客らしい。
子どもの視線で大人の世界を描き出した中編。
(新潮社 605円)