「津軽の髭殿」岩井三四二著
「津軽の髭殿」岩井三四二著
津軽の大浦城の城主、大浦為則は病弱で、もう長くはないことは公然の秘密だった。息子2人はまだ幼く、長女は既に嫁いでいるため、次女のおうらが婿を迎えれば、次の城主の候補となる。
岩木川の支流近くの堀越の館に住む弥四郎は、天下を取ろうと、野望を抱いていた。その弥四郎をおうらと妻合わせようという話が出る。大浦家の3人の家老は、弥四郎が武勇に優れ、家柄も申し分ないことは認めているが、城主となるにふさわしい、文武そろった人物であるか、試そうとしていた。城主が帰依している徳の高い僧に、弥四郎の人柄を見てもらうというのだ。
以前から「おうらの婿になれ、そうして大浦城を乗っ取れ」と弥四郎を鼓舞していた母は、あんな小さな城ごときでとうそぶく弥四郎を、「一城を取るのは一大事ぞ」とにらみつけた。
本州最北の地から天下を狙った津軽為信の人生を描く時代小説。
(光文社 1980円)