「無限の正義」中村啓著
「無限の正義」中村啓著
池袋署管内で、反社会勢力の構成員ばかりを狙った連続殺人事件が発生。箝口令が敷かれていたが、被害者の額には刃物で×印が刻まれていた。マスコミは犯人を“聖掃者”と名付け、池袋署刑事課強行犯係の警部補・薬師丸遼一も聖掃者の捜査に奔走する。
4人目の被害者が出た翌夜のこと。遼一は娘の佳奈から、男を殴り殺してしまったとの電話を受ける。睡眠薬を飲まされレイプされそうになり、抵抗の際に鉄アレイで殴ったと……。遼一が駆け付けると、夕方に会ったばかりの闇金業を営む島田が死んでいた。バレエ留学を目前に控えた娘の将来を考え、遼一は隠蔽を決意。反社を狙った聖掃者の犯行に見せかけ死体を遺棄するが、その場面を聖掃者が目撃していた--。
本書は、連続殺人事件を追う刑事が、「家族を守るため」に犯した罪から、悪のループにはまっていくノンストップエンターテインメント。
捜査に携わりながらも、聖掃者から命じられ証拠隠滅、その聖掃者に遼一をゆする半グレ男の殺害を依頼するなど、気が付けば殺人犯と刑事は共犯の「相棒」関係に。そんな後戻りできない渦の中で、遼一は必死に出口を探っていく。
いくつもの点と点が結び付き、事件が展開されていくさまは圧巻。果たして遼一の思惑通り事件は迷宮入りするか──。
(河出書房新社 1980円)