「江戸酒おとこ」吉村喜彦著
「江戸酒おとこ」吉村喜彦著
灘の造り酒屋の次男・小次郎は、叔母夫婦が浅草で営む山屋で働くために江戸にやってきた。山屋の看板酒「隅田川」は灘の酒に劣らず江戸っ子たちに人気を博していたがここ数年は凋落。小次郎の江戸下りは、そんな山屋のテコ入れが表向きの理由だった。
到着早々、小次郎は江戸でどんな酒が飲まれているのかを知るため茶屋に入り、隅田川を注文するが飲んでみると味も香りも薄い。隣席の浪人によると、多くの店が水で薄めた酒を出しているらしい。酒をなりわいにする小次郎には、酒のたましいまでも薄められているようで切ない。
翌日、初仕事のために山屋に出向くと、龍之介と名乗る昨日の浪人が小次郎を待っていた。
小次郎と龍之介、訳ありの2人が酒造りに奮闘する姿を描く時代小説。
(PHP研究所 957円)