<第1回>金田一のボサボサ頭は脱色して黒く染め、さらにパーマをあてて…
「まだ衣装があります。ただ古くヨレヨレというだけでなく、終戦直後の世相などが出てなくちゃなりませんでしたから。衣装さんと撮影所の倉庫などを探しまわり、明治の終わり頃に普及していたセルという安い生地で、時代劇のエキストラの方のための衣装を見つけたんです。それで最初に参加したのが、逆さ死体のシーンなどがある湖でのロケ。下駄の歯の減った状態で石ころだらけの道をとにかく走らされ、14~15足は割って駄目にしたかなあ。そうやって金田一になっていったような気がします」
――目線の角度から背景の色合いまで、市川監督の作品へのこだわりは有名です。
「同じことを何度も何度も繰り返すんです。どんな映像になるのか、だれにも分からない。一つのシーンを撮るのに一日では終わらず、撮り終えても、次の日ラッシュで監督が見てウンと言わないと撮りなおし。とにかく凄い現場に来てしまった、大変だって思いました」(つづく)