<第1回>実感した“週刊誌記者はゲスな嫌われ者”という現実
ただ、編集部を出てあらためて実感したのは、週刊誌記者は嫌われ者だったということ。サスペンスドラマで物陰からトラブルを盗み見て、それをネタに当事者をゆすり、最後は崖から突き落とされる歪んだ顔の哀れな死体、あれだ。芸能界では“鬼っ子”扱い。同様に新聞記者も「変なこと書くなよ」と釘を刺されることもあるだろうが、それが偏見だとしてもまあ仕方がない。だからこそ、いま、他人様の温情には心の底から感謝する。
「記者はゲス」「怖い」といわれるアウェーな状況下、「バイキング」でご一緒した俳優の坂上忍さんは違った。本音で語る姿勢が人気だが、記者に興味を持ってくれているのか好意的な意見をいただくこともある。同氏の父は小説家で、自身も辛口の「週刊新潮」で連載コラムを持っているので、活字仕事に共感があるのかもしれない。出版にあたり、楽屋でご本人に、帯の推薦文をいただけないかと依頼したところ快諾してくれた。ゲラを読んでもらうと、こんな言葉をくれた。
「中村竜太郎氏はスクープを追いかけるだけの男ではない。人間の奥底に沈殿するなにかに魅せられた男だからこそ、わたしは彼の言葉に、活字に惹きつけられてしまうのだ」
嫌われてもいいと無頼を気取っているが、こうして多くの人に支えられて私は生きている。