黒田福美が語る伊丹十三監督 伝説の“生卵口移し”秘話も
桐朋学園大演劇科を卒業後、OLを経て、女優の道に進んだ黒田福美さん(60)。不遇な日々が続いていたが、転機は1985年の大河ドラマ「春の波涛」で故・伊丹十三氏と出会ったことだった。
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あの日のことは今も忘れないですね。84年の夏も終わりの頃、NHK放送センターのリハーサル室で翌年の大河「春の波涛」の出演者の顔合わせがありました。
日本初の女優・川上貞奴を縦糸に明治を駆け抜けた政財界のお歴々の生きざまを描いた群像ドラマで、貞役が松坂慶子さん、夫の川上音二郎役が中村雅俊さん、福沢諭吉に小林桂樹さん……。さすが大河! と言えるそうそうたる俳優、女優が居並ぶ中、私はといえば、その他大勢の芸妓役でした。
その時、ロの字に並べられたテーブルの私の真正面に座られたのが伊藤博文役の伊丹十三さんです。顔合わせとはいえ、みんな役柄に合わせた衣装を着ていて、伊丹さんは明治の元勲らしいりりしい背広姿。堂々として控室から会場にお越しになられた時点で輝きが違っていました。“オーラ”とか通り一遍の表現では言い表せない神々しさと圧倒的な存在感。私には別格の俳優に映り、感動に打ち震えたほどでした。