青年座「安楽病棟」 超高齢化社会の“生と死”の問題を凝縮
原作は精神科医で作家の帚木蓬生、脚本は杉村春子賞受賞のシライケイタ、演出は気鋭の磯村純。
舞台は東京郊外の認知症病棟。お地蔵さんの帽子と前垂れをひたすら縫い続ける女性、夫の差し入れするサーモンしか食べない女性、自分を23歳の独身だと思い込んでいる女性、色ボケが進み、女性患者に夜這いをする男性……80代から90代、軽度から重度までさまざまな症状の老人たちが暮らしている。
人生の夕暮れ時ともいえる曖昧模糊とした意識の中で、平穏に生きる彼らと、その世話をする看護師たち。しかし、ある日、一人の患者が急死。それを境に、不審な死が相次ぐ。偶然なのか、それとも……。
患者のモノローグと看護師の日記で構成された小説を2幕の舞台劇として構成したシライケイタの手腕が見事。1幕で患者と看護師の日常を淡々と描写することで、2幕での転調、ミステリアスでサスペンスフルな展開が生きてくる。
物語の核心は終末医療、中でも「安楽死」をめぐる問題。とはいっても単なる謎解きではなく、今日本が抱える医療制度、とりわけ終末医療問題を見据えたもの。「人間存在とは何か、命とは誰のものか」を見つめた作品なのだ。